一人暮らしを始めて、何か足りないと思っていました。
「何だか、静かすぎる?」
…いや、一人だし当り前なんですが。
それで、気づいたんです。うん、ピアノの音がしないんだと。
私の実家はとても煩い家です。
母はピアノの講師なので、家では常にピアノの音が響いていました。
姉弟も皆幼稚園〜高校とずっと弾いていたので、毎日家のピアノはフル稼働状態。
そういう訳で、私にとってとても身近な音なのです。
夜想曲、別れの曲、黒鍵、幻想即興曲。
母はショパンのメジャーな辺りが好きな人で、私もかなり影響を受けています。
地元ではコンサートも多く、たまに付き合いがあったり。
…しかし。
好きかと聞かれると正直そこまで好きではないです。
そんなに厳しい指導ではなかったのですが、とにかく泣きながら弾いていた記憶しかない。
指送りが我流過ぎて、怒られては泣き…。
当時の手では足りない指の長さに泣き…。
練習回数をごまかしたのがバレて泣き…。(←これは私が悪い)
「何で他の子はみんな遊んでるのに、うちはあかんのん?」
という直訴状を渡したこともありましたが、クーデターは失敗。(当時小2くらい)
音楽室に入ると必ず弾き出す子が居ますが、その逆で近寄らなかった中学時代。
最低ラインのソナチネを終わらせた後、高校では部活を理由に逃げ回っていました。
とは言えクタクタになって帰ってきても、いつも誰か弾いている訳です。
そこでいつの間にか寝てしまって、晩御飯に起きる。
でも、今は帰っても誰も居ない。
思う訳です。もしかしたら好きだったのかもしれない…と。
友達以上恋人未満な関係とはこのことでしょうか。
ちょっとホームシックになる十五夜の夜なのでした。
イシダ
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